たんぽぽプロジェクト企画室

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斉藤和大賞の絵と長谷川等伯一門との関係。

斉藤和を知ってもらおう画歴第3弾です。今回は、京都美術工芸展で大賞を頂いた絵と、桃山時代長谷川等伯一門との関係についてご紹介します。

 

 

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1999年、斉藤和は京都府京都府京都文化博物館主催『京都美術工芸展』に出品し大賞を頂きました。

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『傍らに』

 

この作品は、大きさ80S(145.5×145.5)とかなり大きな作品となります。

桜の木の下でクレヨンで地べたに画用紙を置いて絵を描く少女。少女の周りにはたんぽぽやしゃがやすみれや山吹き、と花が咲きほこっています。

この桜は、京都市右京区にある仁和寺に咲いている御室桜が描かれています。

御室桜は背丈の低い桜で、遅咲きで有名な桜です。

昔詠まれた歌で、「仁和寺や 足もとよりぞ 花の雲」とありますが、子供の目線でも花を楽しめ、絵も描きたくなる桜なのかもしれません。

 

❀雑学メモ❀ 「京都美術工芸展」はその当時の名称で、もっと古くから現在まで名称や形を変えつつ、京都という土地で芸術家を育て発展をはかる土壌を作り出してくれています。京都文化博物館が開催発表の場とし、この「京都美術工芸展」という名称は約五年ほどでした。現在は「Kyoto Art for Tomorrou-京都府新鋭選抜展」という名称で京都の若手美術作家の登竜門として続いております。

 

 

『傍らに』は画面全体で春が感じられとてもやさしく叙情的で、そのうえで少女からのメッセージ性をも感じられる作品です。少女ですが、斉藤和自身も表しているようにも感じられます。

この写真ではわかりにくいですが、この作品の一番の特徴は、桜の花びらです。

絵具が幾重も重ねられ、砂糖菓子のようにぽってりと厚みをもった一枚一枚の花びらが、春の柔らかな暖かさや子供の健やかさを引き立てています。

 

一つ前のブログで触れました桃山文化の長谷川派の障壁画・桜図の花びらの盛り上げ技法を参考にしている、というお話がありましたが、この花びらでもそれが生かされています。

何故、斉藤和はこんなにもこの時期この技法に魅惑されていたのか、、、。

 

京都市東山区智積院というお寺があり、桃山時代の最高傑作と呼ばれ、国宝にもなっている長谷川等伯一門による障壁画が収蔵庫(宝物館)に所蔵されています。

 

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収蔵庫ここに障壁画が収められています  智積院金堂



 

その中でも最も知られている『楓図』『桜図』などの模写事業に、斉藤和は参加しています。国宝となったその障壁画は収蔵庫で厳重に保管されています。

昔描かれた絵画を模写するという大変な作業と共に、細やかな線や技法的なものがどのように描かれているのかなどを数ミリの所から見ることが出来、時を経て等伯たちの息遣いを感じられることが刺激になり、本当に至福の時を過ごせたと斉藤和は言います。

 

その後、この貴重な体験から、この盛り上げ技法を現代に蘇えらせることは出来ないだろうか。この現代に生きる子供たちを描こうと思った時、その気持ちが大きくなり、この作品『傍らに』へと向かっていきます。

最初は、絵具の重ね塗りで紙が負けてしまったり、現代の方法で盛り上げ技法を考えた時、膠(にかわ)の分量が分からずに剥がれ落ちたりなどなど、試行錯誤を繰り返し繰り返し出来上がった作品です。※膠は日本画の絵具を紙にくっつける接着剤

 

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大書院の襖絵 『楓図』『桜図』

長谷川等伯一門による障壁画の桜の花びらの盛り上げ技法は、貝殻を砕いて作った「胡紛」を塗り重ねて立体的に描く当時でも大変難しい技法と言われ、400年たった今も花びらが残っていることが不思議なことらしいです。

 

❀雑学メモ❀ 模写された襖絵は、この智積院の「千利休好みの庭」と伝えられる名勝の庭を眺められる大書院で見られます。

収蔵庫で長谷川等伯一門がその昔描いた障壁画を堪能し、そしてその大書院で襖絵を当時の色や技法はこのようだったのかと想像を膨らませながら眺めて頂く、そして振り返って利久好みの庭を眺めて、、とても贅沢な時間が過ごせます。

 

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斉藤和が京都美術工芸展で大賞を頂いた時の講評が残っています。

(略)~作品は賞候補を選定する第一次選で6名中5名の支持を得て、あっさりと大賞に決定した。(略)春陽の淡い、どこかぼおっとして不鮮明ななかに、女の子の無心の姿が春の精のようにみえるやさしい絵である。(略)心に訴えるところのある絵として、他にはない鮮度を感じた~

 

この大賞を受賞したことによって、斉藤和の中で覚悟のようなものが生まれたといいます。そして、画廊さんで個展はして頂いていたのですが、この大賞により、初めて百貨店での個展が決まりとても喜んだ記憶があるそうです。

 

盛り上げ技法を使った他の絵も紹介します。

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『花巡り』

 

 

大賞作品『傍らに』は、京都府所蔵という形で、京都文化博物館に今もあります。またいつの日か企画展という形で発表されることがあるかもしれません。

 

❀雑学メモ❀ 現在京都文化博物館では3月27日まで、「工芸、ここが素敵!」という企画で所蔵品と共に工芸の特質や魅力の紹介をやってるそうです!

 

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。。

 

 

今日も素敵な一日になりますように。。。